最終陳述 〜それでも地球は回る〜

2019.03.17 Sunday 19:00

あのガリレオとシェイクスピアが天国で出会ったら…
ミュージカル「最終陳述」観てきました!
“小劇場でふたりミュージカル”というところが気になり、劇プレの加藤さんも出るし
とりあえず一回だけ観に行ってみるか〜 と軽い気持ちで行ったらハマりました。笑

タイトルやあらすじからはなんだか難しそうな印象を受けますが
中身はポップでユニークで楽しかったです。
『観劇の手引き』にさらっと目を通しただけでも大丈夫だったので、その分野の知識がなくても平気そうですが
詳しかったらより楽しめるのかなあとも思いました。

↑『観劇の手引き』 座席に置いてあります。
登場人物や用語の解説が書いてありますが、A4用紙2枚(ぎっしり!)にわたるので
ゆっくり読みたい方は余裕を持って着席することをおすすめします。


続きでネタバレ感想
長いです



物語は宗教裁判で『最終陳述』をする場面から始まります。
天動説が常識であった時代に、地動説を唱えたことで“異端者”として有罪判決を受けるガリレオ。
直後それを否定し、主張を改める続編を書くことを約束し、死刑を免れます。
その後は軟禁生活を送り、病に冒されやがて両眼を失明、その生涯を終えようとします。
しかしふと気がつくと、ハッキリ見える両眼で望遠鏡を覗いているガリレオ。
そこへ案内人と称する男が現れ、一緒に港へ向かうように言います。
「僕はきっと地獄へ行くよね」「大丈夫。港でちゃんと答弁が出来れば、天国行きの船に乗れるから」
道中、彼の人生に大きな影響を与えた人物と遭遇したり、今までの出会いや別れを振り返りながら
港へ到着すると、ガリレオは最後の『最終陳述』をするーー



ガリレオとシェイクスピアが出会ったら、
「ガリレオ!?やっと会えた〜!君を主人公にした物語を書きたいと思ってたんだよ!もう死んじゃったけどね…」
「あのウィリアム・シェイクスピア!?君の脚本全部読んだよ!僕の本は君に倣って書いたんだ!」
ハッピーな両想いでした笑 同い年だからタメ語で良いよね☆ ←かわいい
細かいことを言うと、2人が出会ったのは天国じゃなくてその手前だったと思うんですが
まぁ きっとあのあと2人で天国行きの船に乗れたんでしょうね〜
いや「天国も地獄もない」から あれでガリレオの物語は“終わり”かな。

おふざけやギャグが多すぎるとストーリーに集中できないし、
真面目でシリアスな場面が多すぎるとついていけず退屈してしまうし、バランスが難しそうな作品だなと思いました。
キャストのみなさんは、みんなちょっとボケを入れつつもしっかりやるところはやる、
切り替えが上手だった印象でした。
実は1度目の観劇ではあまりピンと来なかったんですが、曲と演出がなんだか心に残り
トリプルキャストだしもう1ペア観てみよう…と、もう一度行ったらそこでハマりました。
気付いたらチケット買い足してました。笑 もう一度行っておいてよかった〜。
ミュージカルって、特に楽曲を初めて聴くような作品は2回以上観た方が絶対に良い…
1回で歌詞や意図が理解できるならそれに越したことはないですが。

出演者は2人だけ。ほぼ出ずっぱり。いっぱい歌う!どの曲も良かった。
特に、夢の旅へ行く曲と夜空を見上げる曲と「星界の報告」の序文の曲が好きです。ラストのリプライズは格別。
いや曲名がわからないと書きにくい!パンフレットにも書いてない!教えてください!!
拍手をする間も挟まずにポンポン進んでいくミュージカル 大好きです!
ちょっとクドいなと思う部分もありましたが。あと「ラララ」が多いよ〜
楽しそうに歌っているのでそう思わせないですが、考えてみるとどの曲も難しくない?!
ちゃんと息継ぎしてるか心配になるところもある。
ガリレオとマルチマン、どっちが上/下って決まっているわけではなく
曲の最中でもくるくるパートを交換してるのが凄かった!
そういえばダンスも可愛くて楽しかった!同じ振付でもキャストそれぞれ個性が出ていたのも面白かった笑
登場人物の台詞にも印象的なものが多かったです。
特に好きなのは、「あんなに物語を書いたのにまだ書き足りないんだ?」と聞かれて、ウィリアムが返した言葉
「物語が一度世に出ると僕は手を出せなくなる。人々の記憶のなかで霞んだり色褪せたりする。
そうすると僕には何も出来ないから」
あとプトレマイオスの「死んでから自分の出した本が間違っているって気付いたけど、もう死んでるから直せない!
誰かあの本を燃やしてくれないかなあ!」とか
私も舞台の感想ブログ書いたあとに間違いに気付いて、早く直したくてソワソワすることあるので
なんだか分かるなあと思いました。笑
あとあと 美しい薔薇にジェラって「一日3時間だけ咲いてあとは枯れろ」と歌うフレディも好きだった。



生前、“裁判”で酷い目に遭ったのに、死んでからもなお同じ目に遭うなんて災難だなあ…
なんて最初は思いましたが そうじゃなくて、これはガリレオが希望したことだったんですね。
この旅は彼の望むとおりになる夢の物語だったんだ。っていうか劇中でそう言ってた。
タクシー(自動で走る馬車)や飛行機(鉄で出来た鳥)が出てくるのは不思議なところですが。
ウィリアムは旅の案内人であり、ガリレオのなかのもうひとりの自分のようだとも思いました。
そしてこれはウィリアムが描きたかった「ガリレオが主人公の物語」でもあり、
いや ガリレオがシェイクスピアに描かせたかった物語だったのかな。

ずっと「そんな紙束ばらまいてしまえ!」と思いながら観ていたので、個人的に最後はスカッとしました。
でもガリレオは、これ以上失うものも得るものもない、心残りもなくなったあの状況だからこそ
あの答えが出せたのだろうなあ と思います。あまりスッキリした終わり方ではなかったけど。
だってガリレオの中では「地動説=偽り」のままなんですよね?地球は回るけど。
そもそもガリレオは、神の教えに従い"真実"を追い求めた結果、罪人とされてしまったわけで
自分が犯した"間違い"は続編を書き終えたら赦される、救われる、それが正しいことだと そう決意していたんだな。
「真実が大事!」とか言われても「そりゃわかってるよ!」ってなる。
このあたり観ていてモヤモヤしてたのですが、何回か観てやっと腑に落ちました。
そりゃあコペルニクスにあんな風に言われて「地獄に落ちろ!」と返したくもなるし
ブルーノを非難できるわけがない。ロザリオが胸に突き刺さってるんだよ!?ウィリアム、無神経だよ!!
まぁふたりのことを知らなかったなら仕方がない。知ってて言ったならあの無邪気さはとても恐ろしい。
「地球が回っている」のが当たり前のいま観ているから、ガリレオの言動にもどかしくなるけど
その時代を踏まえながら観るとガリレオの選択は痛ましく思える。
周りに受け入れられなくても、それが世間にとって間違いでも、自分の目で見た“真実”を信じ抜く
それが『信念を貫く』ということなのかな と思いました。
歌詞に合わせた演出が心に残る素敵なラストシーンでした。





キャラクターとキャストについて


このお写真かっこいいよねー!
トリプルキャスト×ダブルキャスト で組み合わせは6通り。
観劇順は 伊勢加藤ペア→佐賀加藤ペア→山田加藤ペア→佐賀野島ペア→山田野島ペア
ここまで観たならもう全ペア制覇したかった… 伊勢野島ペアは公演序盤に1公演しかなかったんです。

★ マルチマンについて
ウィリアム、コペルニクス、プトレマイオス、ミルトン、フレディ(GOD)などなど…
1人で何役もこなすマルチマン。凄かったです!出て行ったと思ったらすぐ違う人が出てくる。
加藤マルチマンは引っ張ってくれるガイドさん、野島マルチマンは全力なお手伝いさんという印象でした。
マルチマンのふたりはどちらも良い部分が違うので、どっちかなんて選べない どちらも良いマルチマンでした。
「相手の心を揺るがさないこと、その人の裁判を止めないこと」が自分の役目であり、
「1000人案内し終えたら自分も天国に送ってもらえる」(ガリレオがちょうど1000人目)と言っていたけど
ラストシーンで、それを捨ててでもガリレオに説く姿が良かった。これはガリレオが出来なかったことなのだろうな。
ふたりとも、その終わりを見守る笑顔が素敵でした。
そうそう、「裁判を止めないこと(割り込まないこと だったかも)」という役目については
劇中で分岐した後の片方の曲でしか言っていない!それはいいのか!?結構重要なワードだと思うんだけど…

公式から「男気マルチマン」と呼ばれる加藤さん
劇団で色々こなす姿を知っていたので「マルチマン」って加藤さんにピッタリじゃん?なんて思っていましたが
期待通りでした。なによりすごく楽しそうでした。
そうそう、ハケたらすぐ裏で着替えていると思うんですが、音が気にならなくて不思議でした。早着替えのプロかな?
加藤さんはいままでに色々なミュージカルに出演されていますが
ソロでこんなにいっぱい歌ってるところが見られるのは、今回が初めてじゃないかな!?と思います。
その歌声も、ガリレオを眺める眼差しも、包み込むように優しかった。素敵でした。
喜びのあまりガリレオにハグを迫るあの目は怖かった。笑
加藤さんの歌声は、型にはまらず感情が大きく出るような印象。面白かった。
全体的にコミカルなお芝居、でもそこそこ重いことをサラッと言い放つところや、かるーく核心を突いてくるところ
そういう、思わずドキッ ゾクっとしてしまう部分も好きでした。

公式から「甘えん坊マルチマン」と呼ばれる野島さん
甘えん坊ってどういうこと? と思っていたけど、納得です。スキンシップ取るのが好きなんだろうな〜
初めて拝見しましたが、“上手いミュージカルの人”の歌だった!起伏があって凄かった。
歌詞が凄く聞き取りやすくてスッキリしました。そのうえ野島さんの歌声にはパワーがあった。
ちょこちょこ動き回る姿が可愛らしかったです。
特にタクシーの運転手さん、加藤さんの後に見るとものすごく丁寧で優しく見える笑
そうそう、タクシーを捕まえようとする野島ウィリアムは、全力で飛びかかっていくので
ハラハラします笑 物理的に止めにかかっている…
「ところで君は?」「シェイクスピア!」のあの軽さ すごく好き笑
笑顔がすっごくチャーミングだったけど、でもその笑顔で突き放すようなことを言うところが
なんだかこわくて好きでした。全部知っててガリレオを試そうとしてる?
あとダンスが固い!笑 その姿も愛おしくなってしまった。喜びが伝わってくるようで良かったと思います。
そうそう、裁判シーンの声は野島マルチマンの回は加藤さん、加藤マルチマンの回は野島さんだったのですが
その野島さんの声が好きでした〜。そこもまったく違う印象で面白かった。

★ ガリレオについて
最初は「死にたくないが為に嘘をついた卑怯な人」という風に見えてしまいましたが
天動説を否定すると神と教会に背くことになるし、
地動説を否定すると星たちを裏切ることになる
どっちにいっても苦しい 哀しい人だったのだなあと思いました。
そりゃコペルニクスみたいに出来たら楽だったかもしれないけれど、それこそ"卑怯者"だし
「神を信じる自分」を突き通すために頑張っていたのかなと思いました。
というか、特に山田ガリレオなんかはそういう風に割り切っていた印象でした。
地動説を否定したことについて責められると、山田ガリレオは少しムッとした感じですが
佐賀ガリレオはばつが悪そうな、それかとても申し訳なさそうな かなしい顔をするんですよね〜…。
私は特定の創唱宗教を信仰するという経験がないし、きっと日本人にはそういう人が多いと思うんですが
ガリレオの中で“神の教え”がどれだけ大きなものなのか、それに背くことが何を意味するのか
そういう部分をちょっと想像することで、モヤモヤしてた部分が解決できた気がします。
逆に「ちょっと想像」しないとスッキリしなかった。まぁこれは私の理解力が低いせいかもしれないです…

公式から「やんちゃガリレオ」と呼ばれる伊勢くん
個人的にオモシロのイメージがあったせいか、コメディ色が強いガリレオでした。
加藤さんのコミカルなお芝居に一番合っていた気がします。でもしっかり魅せるところは魅せる。
ミルトンとのシーンの、晩年のガリレオの姿が印象的でした。
ただ、歌が残念でした。
特に高音が出なかったり、盛り上がる部分で声が伸びなかったりしたので
歌詞が頭に入ってくる前に「声が出てないな…」とそっちに意識が行ってしまう。
他の2人のガリレオを観た後に思い返すと、伊勢くんの歌には惹きつける力が少し足りなかったように思います。
お芝居は非常に良かったので、そこが惜しかったです。
がっつりミュージカルに出演するのは初めてらしい?もっと良くなるはず!なので頑張ってほしいです。
ホントにお芝居は良かったんです。表情が良かった。
特に伊勢くんのあの『最終陳述』、序盤の方も終盤の方も良かった!

公式から「猪突猛進型ガリレオ」と呼ばれる佐賀さん
力強く勢いがあるので、その表現は納得でした。
リアクションも動きも大きかった印象。あと声も大きかった。
伊勢くんの回を観た後に「きっとこの曲は違う人が歌ったら本当の姿が見えるのだろうな…」と
思っていたのですが(申し訳ない)、その見たいと思った姿を佐賀さんは見せてくれました。
これが聞きたかったんです!
佐賀さんのこと初めて拝見したのですが 歌がお上手でした!
縋るような目がなんだか可愛らしかった…笑 情けない表情が魅力的でした(褒め言葉です)
それと星を見る目がまるで恋人に対するようで、本当に恋をしていたんだなあと思いました。星大好き度が高い。
最後に、込み上げすぎて泣いちゃうサガリレオすごく好きです。
観てるこっちも泣いちゃう… それを笑顔で見守るウィリアム。素敵
野島さんとのペア、とてもバランスが良かったと思います。おにいさんたちダンス頑張ってる…!かわいい…
純粋で優しくて星をまっすぐ愛するガリレオだった。無理しているのがバレバレ…
佐賀さんの人の良さが滲み出ているんだろうな と思えました。

公式から「王子ガリレオ」と呼ばれる山田さん
本当だ!王子でした!!紛れもなく“王子”。
ローブを脱いであの衣装で出てきた瞬間に「王子だ……!」って感動しました。
(ちなみにあの衣装の伊勢くんは“ぼっちゃま”、佐賀さんはまさに“学者”って感じでした)
山田さんのことも今回初めて拝見したのですが、お写真から想像していたよりその歌声は低く厚みがあって
それがすごく加藤さんの歌声と合っていて 素敵でした!
加藤さんの高音と山田さんの低音がカッチリハマったと思ったら、次の瞬間には逆転していたり。
感情を大きく出すわけではないけど、見ているとその情景を感じるようで序盤からなんだかウルっとさせられました。
それから、麗しい上にめちゃめちゃチャーミングでした〜 かわいい〜〜〜
山田ガリレオがぴょんぴょん跳ねるのにつられてウィリアムもぴょんぴょんして、スゴイ癒し空間が広がります笑
タクシーでの挙動なんてその全てが愛らしすぎて困った…
「望遠鏡 誰が作った?僕が作った!」嬉しそうにニコーッとしたあと、
手に取るのも勿体ないくらいな、とても大切なものを見るような目で 夜空を見上げる姿がとても好きでした。
可愛らしい面もあるけど、でもちょっと関わるのが面倒くさそうな堅物な感じ サイコー…
頑固で自信家。図星を突かれると怒る笑 最後の『最終陳述』なんて、決意固くて説得の難易度高い…
麗しく爽やかな"王子"なだけではなく、とても人間くさくて良いガリレオでした。
山田さんは観に行くたびに歌が上手くなっていた!こわい…
分かりやすく変化があって、回によって印象も少し変わって面白かったです。
あとカタリーナへのアピールはゲンガリレオが最強。さすが王子…




↑今回の座席表。
どこに座ってもステージに近い。
実際はこの表よりも座席が多く用意されてたり少なくなったり。行くたびに座席数が変わる…
やはり正面から観るのが一番だと思いますが
真横から観るのも面白かったです。EブロックもWブロックもそれぞれおいしいポイントがあります。
いろんな角度から楽しむことができるのは良いですね!


「ミュージカル」である理由が納得できる作品だと思いました。
分かりにくかったりとっつきにくい話を、入りやすくしたり考えるきっかけになったり
歌にはそういう力があるんだなと改めて思いました。
この作品がミュージカルじゃなかったらここまで何度も観ようと思わなかっただろうし、ハマらなかったかも。
そもそもガリレオを主人公にミュージカルを作ろうとしたのが凄いなあ〜
この作品に出会えて良かったです。観るきっかけになってくれた加藤さんありがとう。
曲が好きなので音源化して欲しい!記憶のなかで霞んだり色褪せたりしてしまうので…!


おまけ

この5人で良かった!

細かい感想ツイートはこちらにまとめているのでよろしければどうぞ
ミュージカル「最終陳述」感想まとめ - Togetter
category:演劇・映画など | by:せみ | - | -

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