月がとっても睨むから

2019.08.07 Wednesday 05:00

ザ・ミセスフィクションズ4「月がとっても睨むから」
前回の「伯爵のおるすばん」が面白かったのと、今回の公演ビジュアルに惹かれたので観に行ってきました。
なにやら公演延期を経ての上演らしい。思い入れがある人にはあるんだろうな。私は無いです。

とっても良い舞台でした。
しかし上演会のDVD(120分)が付いてチケット代3500円ってちょっと安すぎませんか?


続きでネタバレ感想です。



「罪と暮らせば。」
謳い文句が良い。


〜 あらすじ 〜
大きな月の夜
来年に中学受験を控えるミツ夫くんは、塾の帰り道にセーラ服美少女戦士のお姉さんに誘拐されました。
一週間くらいずっと「改造手術」を受けました。
ミツ夫くんはいま錦糸町の帝王として夜の世界を生きています。
いまの暮らしに満足しているミツ夫くんは、お姉さんに会えたらお礼が言いたいと思っていました。
そんなある日、ミツ夫くんはお姉さんと再会しました。あれから20年経った夜のことでした。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

端的に言えば性犯罪の被害者と加害者の話です。
「更生」ってなんだろうなー 「償い」ってなんだろうなーってことを観ながらずっと考えていました。
「人生は一度きりしか無いんだから楽しまなきゃ!」って言うけど、楽しんでいたら楽しんでいたで
「ひとの人生掻き回しておいて自分はのうのうと生きやがって」って思っちゃいませんか?私なら思います。
だからといって「人生の楽しみなど考えずに自分の罪だけ見つめて一生俯いていろ」っていうのも
それはそれでどうなのかなあとも思うし…。
赦すこと、赦さないこと って難しいですね。
美奈子はミツ夫本人に「もう許してるから人生楽しみなよ」とか言われても、自分自身を赦すことが出来ずに居たし。
というか美奈子って一度も捕まっていないんですよね?
事件のあとに捕まって、なんらかの刑を受けていれば少しは違ったんじゃないかな。違わないかなあ。
まぁ「もしも」の話はしても意味がないんですけど。
刑って被害者のためだけじゃなく加害者のためでもあるんだろうなあとか考えました。

美奈子のことを赦していたつもりだったのに
本当はそうじゃなかった自分に気付くミツ夫にとんでもなく胸が締め付けられます。
万能感に包まれて現実味のないまま20年を生きてきたけど
あのとき美奈子の体温に触れてようやく"現実"を感じることが出来たんですね…
正体不明の万能感は自己防衛本能によるものだと思いました。
「いまの自分に満足している」「赦すどころかむしろ感謝している」と思っていたのも
そう考えないと生きていくことが出来ないから。方向がポジティブで凄いな…。
現実味がなかったっていっても 帝王と呼ばれる地位と名誉を築いてきたのは事実だし。ミツ夫くん凄いよ。
あれで「錦糸町の帝王」は全部妄想でした、みたいなオチだったら私はしばらく落ち込んでました。
ライダーベルト壊れちゃったけどね。つまり失脚を意味するのですが
まぁヒーローの大事なところはガワじゃないし。

ラスト、大きな月の下でふたりが対話するシーン
ここでスガシカオの「黄金の月」が流れ出したら私は泣いてしまうなー と思っていたら
(OPでスガシカオの楽曲が使われていてそれがメッチャ格好良かったんです)
バッチリ流れ出したので私は泣きました。泣くしかないでしょ?!感動を通り越して怒りが湧く(?)
「ごめんなさい」じゃ済むわけないけど、
そこからでしかはじめられない ふたりはようやく進み出すんだな と思えました。
物語がどんな風に終わるのかドキドキしながら観ていましたが、凄く好きなラストでした。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

美奈子をはじめ劇中に登場する女性の多くが「ショタコン」なわけですが
みんな自分が「ショタコン」なのは生まれつきだ、みたいに言ってたのが良いなあと思いました。
生まれつきなのか?てちょっと疑問でしたし、こういったものって
家庭環境のせいだとか、周りの影響のせいだとかって扱われることが多い気がしますが
そうじゃなくて、自分が自分である限りなにがあってもこの道を辿ることになっていたのだ…!という感じ?
ちなみにいま調べて知ったんですが「性的嗜好」は後天的なもの、「性的指向」は先天的なものと分けられるそうです。へぇ〜。
美奈子はコンプレックスが度を越してなんだかアレルギーみたいになってるなあ…と思いました。
「遭遇する可能性があるから夜しか出歩かない」徹底している。
ずっとそばにお父さんを見ていたのは、自分の指向や行為をお父さんのせいにしたかったから
つまり自分自身と向き合うことが出来ていなかったんだろうなと思います。
お母さんや漫画家のまこちゃんは、自分の指向を受け入れ良い方向に活かして成功している例みたいでした。
漫画の内容、あれはどうなんだ…と思いましたが。受賞おめでとう…。
ちなみに私 セーラー戦士ではまこちゃん推しでした。ポニーテールと緑色にときめきました。
「仲間と集まってありのままの自分で語り合っていたあの頃が一番楽しかった」
空が白むまで語り明かした経験が私にもあるので、とてもよく分かりました。

被害者と加害者といえば、受付のバイトふたりもその関係になると思うんですが
お互い知らないのかな。振り込んでる方は名前が分かるんだから知っているか。
様々なバイトを掛け持つバイトマスターなアシベちゃんすっごく格好良かったなー!
「彼氏って死んだら"彼氏"じゃなくなるんスか?」
グサーッと刺さりましたね!しかもあのあっけらかんとした言い方ね。
あんなに楽しそうに彼氏の話されたら、まさか死んでるとは思わないじゃないですか…。
でも確かに死んだからって関係が無くなるわけじゃないもんね。ハッとさせられました。


死と生への考え方、というか向き合い方が素敵だなと思える人ばかりでした。
っていうかみんなやさしくてあたたかい人たちですね。
なにより自分の気持ちを素直に伝えることが出来るって これは結構凄いことだと思います。
言うのは簡単なんですけどいざやろうとすると難しいと思うんですよ。少なくとも私には難しいです。
ミツ夫にも美奈子にも、居場所を用意して待ってくれる人が居て良かったなあと思いました。
でもミツ夫くんあの後どうなったんだろう。錦糸町から離れちゃったの?すぐ戻ってきたのかな?

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テーマは重いけど登場人物たちの会話はポップで、楽しく観ることが出来ました。
いや言い回しとかテンポとか面白すぎる…。
度々出てくる錦糸町ネタ、面白いこと考えつくなあ〜と思っていたらあれ実在するんですね。
「おなかスクエア」とかホントにあるんですね。ノンフィクションだったのか…。
錦糸町ってすごい町だな… そして江東区になにがあったのか気になります。

漫画やアニメや特撮ネタがたくさんで、分かるものが多かったので楽しかったです。
登場人物の名前も有名な作品が元ネタになっているっぽい。
ミツ夫くん、ライダーベルト着けてるけど「ミツ夫」なの 良いですね。
あとなんで"セーラー服美少女戦士"だったのかなあと考えていたんですけど
もしかして鉄人28号(「ショタコン」の起源とされる作品)が"太陽の使者"だから、それに合わせて"月の戦士"?!
ムーンじゃなくてVなところが良いなって思いました。意味とかありそうな気がする。


今回の劇場、すみだパークスタジオ倉は駅から少し離れていて10分以上歩くけど、
その道順はシンプルなので初めてでも迷わず行けました。
そういうところも良いなあって思いました(もうなんでも"良い"です)。

面白かったし、観られて良かった。今後も積極的に観たいと思う人たちが増えてしまいました。
category:演劇・映画など | by:せみ | - | -

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